「つながり 社会的ネットワークの驚くべき力」
ニコラス・A・クリスタキス
ジェイムズ・H・ファウラー
2010年7月21日 第1刷発行
「つながり」は、社会学者のニコラス・A・クリスタキスと政治学者のジェイムズ・H・ファウラーによって書かれた、社会的ネットワークの影響力に関する画期的な著作です。
本書の核心は、人々のつながりが単なる個人間の関係を超えて、私たちの生活のあらゆる側面に深く影響を与えているという洞察です。著者たちは、膨大な研究データと実例を用いて、社会的ネットワークが健康、感情、政治的選択、経済行動など、様々な領域でどのように作用しているかを明らかにしています。
特に興味深いのは、「三次のルール」と呼ばれる概念です。これは、私たちが直接知っている人々（一次のつながり）だけでなく、その人々が知っている人々（二次のつながり）、さらにはその先の人々（三次のつながり）までもが、私たちに影響を与え得るという考え方です。この視点は、社会的影響力の及ぶ範囲が従来考えられていたよりもはるかに広いことを示唆しています。
著者たちは、肥満、喫煙、幸福感などの「伝染」現象を例に挙げ、これらが社会的ネットワークを通じて広がることを実証的に示しています。例えば、友人が肥満になると、その人の友人も肥満になるリスクが高まるという研究結果は、健康が個人の問題を超えた社会的な現象でもあることを示唆しています。
また、本書は社会的ネットワークの構造にも注目しています。ネットワークの中心に位置する「ハブ」の役割や、「弱い紐帯」の重要性など、ネットワーク理論の基本的な概念が分かりやすく説明されています。これらの概念は、情報の伝播や革新の普及など、様々な社会現象を理解する上で重要な視点を提供します。
本書の魅力の一つは、複雑な社会現象を身近な例を用いて説明している点です。友人関係、職場のつながり、オンラインコミュニティなど、読者にとって馴染みのある場面を通じて、社会的ネットワークの原理を理解することができます。
さらに、著者たちは社会的ネットワークの「善い面」だけでなく、負の側面にも目を向けています。例えば、ネットワークを通じて好ましくない行動が広がるリスクや、ネットワークの力を悪用した操作の可能性についても言及しています。
本書は、私たちが日常的に経験している「つながり」の背後にある科学的な原理を明らかにすることで、読者に新しい世界の見方を提供します。それは同時に、私たちが自分のネットワークをより意識的に構築し、活用することの重要性を示唆しています。
この本は以下のような人々にお勧めです：
1. 社会学や心理学に興味がある学生や研究者
2. ビジネスにおけるネットワーキングの重要性を理解したい経営者や起業家
3. マーケティングや広告の分野で働く専門家
4. 公衆衛生や健康政策に関わる人々
5. 社会現象や人間関係のダイナミクスに関心がある一般読者
6. ソーシャルメディアやオンラインコミュニティの影響力について考えたい人
7. 自己啓発や個人の成長に関心がある人
8. 政治や社会運動のメカニズムを理解したい活動家や政策立案者
本書は、学術的な厳密さと一般読者向けの読みやすさを両立させており、幅広い読者層に訴求する内容となっています。社会的ネットワークの重要性がますます高まる現代社会において、この本は私たちの「つながり」に対する理解を深め、それを効果的に活用するためのヒントを提供してくれるでしょう。
［図書館南陵分館］
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